要旨
2024~2025年度、日本経済は「金利のある世界」への回帰という歴史的な転換点を迎えた。地銀の「益出し余力」と「有価証券含み損」の実態は、所在する地方自治体の経済的持続可能性と密接に連動している。本ランキングでは、全国の主要都市圏および地方中枢都市から30の自治体を抽出し、金融機関の健全性と自治体財政の連動性を5段階のティアで評価した。
金融持続可能性ランキング (1位~30位)
金融機関の健全性が自治体に与える影響度に基づいた階層別評価
盤石の要塞 (Sクラス)
含み益による絶対的防衛圏。金利上昇リスクを完全に吸収可能。
京都市(京都府)
主要行: 京都銀行
任天堂・京セラ株等の莫大な含み益が「益出し余力」となり、債券損失を即座にカバー。地域のソブリン・ウエルス・ファンド。
宇治市(京都府)
主要行: 京都銀行
京都銀行の強固な地盤内。金利上昇局面でも地域企業への低利融資を維持できる体力を維持。
大津市(滋賀県)
主要行: 滋賀銀行
「益出し余力」上位常連。経営陣の危機意識が高く、本業の収益強化と構造改革を並行して推進。
草津市(滋賀県)
主要行: 滋賀銀行
人口増加地域であり、滋賀銀行の攻めの融資姿勢とマッチ。成長地域への優先的貸出による好循環。
彦根市(滋賀県)
主要行: 滋賀銀行
滋賀県内の経済ネットワークにおいて強固な基盤を維持。巧みな有価証券運用が信用創造を支える。
覇権と成長 (Aクラス)
圧倒的シェアを持つ「メガ地銀」が支える。再編による体力強化が進行中。
6位:福岡市(福岡県)
主要行: 福岡銀行 (FFG)
地銀界の「覇者」。圧倒的規模で「天神ビッグバン」を支える。他行との覇権争いでも優位。
7位:豊田市(愛知県)
主要行: あいちFG、名古屋銀行
製造業基盤に加え、地銀再編により金融機能が強化。産業界の要請に応える効率化が進行。
8位:名古屋市(愛知県)
主要行: 名古屋銀行、あいちFG
再編機運が活性化。創業家パワーが健在で意思決定が速い。産業集積と銀行収益の好循環。
9位:北九州市(福岡県)
主要行: 福岡銀行、西日本シティ銀行
福岡市の成長の波及に加え、FFGの強力なコミットメント。県内シェア維持のため資金供給は安泰。
10位:静岡市(静岡県)
主要行: 静岡銀行 (しずおかFG)
地銀トップクラスの財務体質。早くから「金利ある世界」への備えを進めており、自治体連携も強固。
競争と防衛 (Bクラス)
強力な銀行同士が競合。競争原理が自治体の資金調達に有利に働く側面も。
11位:下関市(山口県)
主要行: 山口銀行 (YMFG)
福岡勢との「防衛的最前線」。競争原理により有利な調達が可能だが、長期的な体力消耗が懸念。
12位:山口市(山口県)
主要行: 山口銀行 (YMFG)
県都として密接な行政連携。トップ人事の混乱はあったが、組織規模は大きく地域を支える力は健在。
13位:岐阜市(岐阜県)
主要行: 十六銀行、大垣共立銀行
独自路線の経営。愛知経済圏との結びつきは強いが、国債含み損の影響は避けられない。
14位:岡崎市(愛知県)
主要行: 岡崎信用金庫、名古屋銀行
強力な信金と地銀が補完関係を構築。地域内での資金循環は比較的安定している。
15位:久留米市(福岡県)
主要行: 福岡銀行、筑邦銀行
福岡銀行の勢力圏内。地元行の体力が相対的に低く、FFGへの従属的安定という構図。
構造的課題と消耗戦 (Cクラス)
リスク顕在化の予兆。激しいシェア争いが収益性を疲弊させるリスク。
16位:松江市(島根県)
山陰合同 vs 島根(SBI)
「殿様地銀」による激しい消耗戦。SBI連携の島根銀行は収益性と財務の不安定さが課題。
17位:出雲市(島根県)
山陰合同 vs 島根(SBI)
松江と同様の構図。敗者の撤退による金融サービスの空白化(金融砂漠)が懸念される。
18位:仙台市(宮城県)
七十七 vs 仙台(じもとHD)
強者(七十七)と弱者(仙台)が混在。公的資金注入議論が出る「弱者」側の中小企業金融に不安。
19位:山形市(山形県)
山形 vs きらやか(じもとHD)
きらやか銀行の経営が厳しく再建中。地域金融の片翼が傷んでおり、行政サポートが限定的。
20位:宇都宮市(栃木県)
足利 vs 栃木
証券運用比率が高く、金利上昇による含み損の影響を受けやすい構造。市場変動への感応度高。
21位:前橋市(群馬県)
群馬 vs 東和(SBI)
東和銀行のSBI戦略が不透明。地域第二行の戦略が揺らぐと地元企業の資金繰りに直結。
貧困と存続の危機 (D〜Eクラス)
「貧困地銀」集中エリア。自治体財政へのネガティブ波及が強く懸念される。
22位:郡山市(福島県)
評価: 構造的脆弱
主要行(福島・大東)が含み損ワースト。自己資本不足による貸し渋りが地域経済の底割れを招く恐れ。
23位:福島市(福島県)
評価: 構造的脆弱
郡山と同様。SBI構想瓦解の影響を最も受けやすい。民間活力の低下が県庁所在地の維持を脅かす。
24位:水戸市(茨城県)
評価: 効率化圧力
筑波銀行がSBI提携。再編・効率化に伴う店舗統廃合が地域利便性を損なうリスク。
25位:秋田市(秋田県)
評価: 債券依存
人口減少率全国トップで貸出先枯渇。債券運用への過度な依存が金利上昇の直撃を受ける。
26位:徳島市(徳島県)
評価: 逆風
保守的運用が仇となり評価損を抱える。関西圏への進出も他行との激しい競争に晒されている。
27位:高知市(高知県)
評価: ジリ貧懸念
地域経済縮小に伴い銀行の基礎体力が低下。挽回の糸口が見えない八方塞がりのリスク。
28位:鳥取市(鳥取県)
評価: 規模の限界
全国最少人口県で規模の経済が働かず。隣県(島根)の消耗戦の余波を受けやすい。
29位:佐賀市(佐賀県)
評価: 覇権下の苦悩
福岡銀行の勢力圏に飲み込まれ、優良貸出先を奪われる「逆選択」の状況に陥るリスク。
30位:宮崎市(宮崎県)
評価: 周縁リスク (E)
「益出し余力」が致命的に不足。金利上昇の荒波を単独で乗り切る体力がなく、地域活性化の資金源が細る。
構造的課題の詳細分析
「持てる者」と「持たざる者」
京都銀行(1位)が君臨できるのは、過去に投資した任天堂株などの含み益という「貯金」があるからだ。対して下位の「貧困地銀」はこの貯金がない。国債の損失はそのまま赤字となり、自己資本を食いつぶす。これが自治体にとっての「起債引き受け手不在」という悪夢につながる。
SBI連携行の岐路
SBIが主導してきた地銀連合構想だが、2024年の現実は提携先が「含み損ワースト」に名を連ねている。郡山市や福島市などの自治体は、「SBIが助けてくれる」という期待をリセットし、最悪の場合の再々編や救済スキームを想定しなければならない。
自治体への緊急提言
1. 財務モニタリング
表面上の自己資本比率ではなく、含み損益を加味した「実質体力」を把握せよ。
2. 調達先の多様化
「地銀頼み」から脱却し、広域連携や住民参加型公募債の拡充を急げ。
3. エコシステム構築
クラウドファンディングや政府系金融との連携で、地元の資金繰りを多層化せよ。